経済成長なき社会発展は可能か?
 
 <脱成長>と<ポスト開発>の経済学
      セルジュ・ラトゥシュ  
      中野 佳裕 訳
      作品社 発行

     函館市中央図書館蔵
 地球環境の悪化がいわれ「宇宙船地球号」が限界あることが指摘されて久しい。しかし、なお政治も社会も経済の発展と成長が課題とされ続けている。
なるほど、経済成長は続き、大規模プロジェクトが実施され、数字の上での経済成長が実現しているが、それを豊かさとして実感することは少ない。
この本は現代経済の合言葉である成長と発展、開発から抜け出した<脱成長(デクロワッサンス>を目指しており、そこでの豊かさの実現を提唱している。経済的価値を究極の目的としないこと、想念の脱植民地化と脱経済化をし、物事をこれまでと違った方法でみつめなければならないという。
オルタナティブ、ヴァナキュラーな社会、共愉(コンヴィヴァリテ)など、なじみのない言葉の概念が理想社会の内容となっており正確には理解し難い部分がある。これまでの西洋社会をモデルとした文明の拡散のグローバリズムを脱却し近隣主義的ローカリズムを提唱している。
第U部では<脱成長>による新たな社会発展について述べ、脱成長社会を構築するのは8つのre(再),再評価、概念の再構築(reconceptalize)、社会構造を建直す(restructure)、再分配(redisutoribute)、再ローカリゼーション、削減する(reduire),再利用する、リサイクルを行うの8つだという。
中でも再評価、削減、再ローカリゼーションは戦略的役割を持つという
再評価は変化をもたらし、削減は脱成長の実践であり、再ローカリズムは、アーバンビレッジ、スローシティ運動につながり雇用をもたらし政治的革新と経済的な自律をもたらすとしている。
著者の思想的は近代主義を批判し資本主義を否定する、資本主義を超克したエコロジカルな社会主義とみなすことができるだろうといっている。
アニミズムに共感した記述も多く今の社会が行き過ぎた(過剰な sur)に満たされた世界であることも理解できるが、著者は脱成長社会は世界を再魔術することにより実現するという。しかし「発展」という尊いオフダの魔力はまだ続くであろう。