黒船前夜
ロシア・アイヌ・日本の三国志
渡辺京三 著  蒲m泉社 発行
 北海道、サハリン、カムチャッカ、千島列島、アリュウシャン列島、極東アジア北部の地域をめぐるロシアとアイヌと日本の三者の関わりの歴史と、日本とロシアがこの地域で覇権を得ようとする時代の両国の交渉史。
 日本の関わりについては、松前藩と幕府の政策の変遷も興味深い。
1853年にペリーが来航してから喧しく開港についての議論が行われたかに考えられているが、実は、ロシアはそれより130年も前から、日本に通商を求め続けてきていた。

ロシアはシベリアを17世紀にはその領地として支配しており、南の清国と接触しながらオホーツクを越えてカムチャッカ半島に達していた。
毛皮等をヨーロッパに送って経営を立てていたが、食料、物資の補給は、陸路ではままならづ、海路にたより、日本からの補給を望んでおり関心が高かった。
日本は、松前藩はアイヌとの交易によって、蝦夷地経営しており、北海道だけでなく、択捉国後島のアイヌとも接触があった。
すでにロシア人が住んでいた、カムチャッカや、北クリル(千島)には、日本の難破船が黒潮にのって漂着する例もあり、漂着した日本人から、日本の事情、日本語を聞き取り、ロシア中央に送る例もあった。
ロシア政府も東端の国土の興味から、その地の測量、探検に軍人を送った。
千島列島をたどって、蝦夷地に上陸するものもあり、松前藩と接触するようになった。
松前藩は幕府に報告し、幕府はそれに対応せざるをえなくなる。
幕府も北方調査のため、間宮林蔵などを送りこんだ。

本書は、ベニョフスキーの寄港から話を始め、これらの史実を人名を挙げながらひとつづつ語ってくれる。
当時は、十分な通訳もできない会話から誤解も生まれ、中央政府とのやり取りに時間もかかる。幕府の鎖国政策のなかで成果をみるには何ヶ月もかかった。
レザーノフの来航と長崎での交渉は中でも、緊張したもので、その後のフヴォストフとダヴィドフの蝦夷地襲撃につながる。
これにより、蝦夷地警戒を強める幕府とゴローヴニンの抑留と高田屋嘉平のロシア側の拿捕抑留につながる。
このとき日本に寄港したリコルドは、領土確定や友好関係樹立の任務をおびてもいたが、それを断念した帰還した。
これで、一応、日ロ間の交渉は途絶え、日本の北方への開国交渉はなくなる。本書は日ロ間だけでなく、アイヌと松前藩や幕府、アイヌとロシアとの交流などが語られており、ぺりー以前、高田屋嘉平以前の北海道史として面白く読んだ。